ショックだった再生紙偽装事件
古紙配合率偽装問題は、エコ商品の信用を大きく失墜させる事件でした。今年初め、「年賀はがきの古紙配合率が偽装されている」というニュースを聞いた時、私も少なからず驚きました。環境に配慮した紙として大学でも自宅でもコピー用紙は古紙100%の再生紙を利用していました。名刺も古紙100%のマーク付きのものを割高料金で、わざわざ注文して使っています。その100%が偽装だったわけです。
再生紙利用は、時代に迎合したアクセサリーか
偽装を認め、テレビで陳謝する製紙会社のトップの姿をみると、再生紙利用は、環境のためではなく、時代に迎合したポーズ、アクセサリー程度のものに過ぎなかったのではないかという疑問さえわいてきます。日本の古紙は「リサイクルの優等生」といわれてきました。日本全体で約1900万トンの古紙が毎年再生紙として再資源化され、有効利用されています。排出された紙のうち、約60%がリサイクルされているわけで、世界に誇れる「優等生」です。古紙のリサイクルが進めば、それだけ伐採される樹木が減り、森林保護に役立ちます。
コンプライアンスなどあってなきがごとし
今回偽装を認めた製紙会社は、いずれも日本を代表する大企業です。その大企業が、グリーン購入法の対象になるように、実際には古紙配合率50%のコピー用紙を100%と称して政府機関などに納品していたわけです。コンプライアンス(法令順守)などあってなきがごとしで、ただただ呆れるばかりです。「古紙100%か50%か」の判断は一般の人には分かりません。製紙会社を信用して委ねるしかありませんが、それをいいことに偽装を続けた製紙会社のモラルは厳しく糾弾されなくてはなりません。
エコ商品の普及に冷水をあびせる
再生紙は、代表的なエコ商品です。それが偽装されていたとなると、他のエコ商品も、にわかに信用できないといった不信感が消費者の間に広がりかねません。環境意識の高まりとともに多少価格が高くてもエコ商品を買いたいと思う消費者が最近増えているだけに、古紙偽装事件はそうした消費者に冷水を浴びせる結果になってしまい残念です。
求められる「見える化」、「見せる化」戦略
企業の中には、環境に配慮したエコ製品を真剣に開発し、販売することで社会に貢献したいと願っているところも少なくありません。そうした企業の間では、自社のエコ商品が本当に環境に配慮した製品であることを消費者に知ってもらうため、「見える化」、「見せる化」戦略を強めてきています。
環境に優しいだけでは信用されない時代
抽象的に、「わが社の製品は環境に優しい」といっても、消費者は信用しません。環境に優しいことを具体的に示した数字、たとえば電気代の節約、CO2削減率、保温性に優れた素材の使用、機能、耐用年数などを事細かく説明して、消費者に納得してもらうことが必要です。これが「見える化」、「見せる化」戦略です。この戦略は、相手が心底納得して購入することが必要です。そのためには十分時間をかけ、説明することがポイントです。「売りっぱなしで後は、知らない」といったこれまでのような使い捨て商品を売るような姿勢では成功しません。
性能、使い方、廃棄まで丁寧な説明が必要
たとえば、家庭で使う冷蔵庫については、製品そのものがエコ製品であることを、まず初めに「見える化」、「見せる化」戦略で徹底的に説明することが大切です。しかしそれはまだ第一段階に過ぎません。第二に使い方に関する細かな情報提供が必要です。たとえば、省エネルギーセンターの「家庭の省エネ大辞典」によると、冷蔵庫にものを詰め過ぎた場合と比べ、半分程度にすると電気代は年間960円節約できるし、CO2排出量も18kg減少します。また周辺温度が15℃の場合、設定温度を「強」から「中」にすると、電気代は1360円節約、CO2排出量も25・3kg減少します。このように同じ冷蔵庫でも、省エネ型の使い方をすれば、大きな効果が期待できることを伝えます。
さらに第三に耐用年数が過ぎて、廃棄物になった場合の処理、回収方法などについても十分な説明が必要です。
ヒートポンプを使った省エネ型のエコキュートの場合
エコ商品として最近注目されている商品の一つに省エネ型給湯器のエコキュートがあります。ヒートポンプを使い、空気の熱でお湯を沸か画期的な商品です。ヒートポンプを動かす電気を発電する際にCO2が発生しますが、家庭で利用する時には、CO2を一切排出しません。燃焼型の従来方式の給湯機器と比べると,エネルギーは3分の1、CO2の排出量は半分以下に減ります。エコキュートの普及に力を入れている東京電力では、エコキュートの特徴を図表やモデルルームを使って分かりやすく説明しています。同社の電力供給エリアではすでに33万台が設置され、約215万トン相当のCO2を削減したそうです。
100年住宅は、モデルハウスに泊まって体験
100年住宅を提案している北海道の木造住宅メーカー、木の城たいせつは、冬の寒さに耐えてきた北海道の木材しか使わないことを打ち出し、購入者には、事前に同じ方式でつくったモデルハウスに家族で一泊してもらい、納得した上で、購入してもらうようにしています。
売り手と買い手が環境意識を共有する
繰り返しになりますが、エコ商品は、これまでの商品のように「売りっ放しで、後は知らない」という売り方では成功しません。売り手も買い手も、その商品を通して環境に貢献するのだという強い信念、考え方を共有することが必要です。そのためにも、「見える化」、「見せる化」を徹底させ、納得づくで購入する新しいタイプの関係が求められます。
2008年4月22日記