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洞爺湖サミットを採点する

☆大山鳴動してねずみ一匹の酷評もあるが・・・


洞爺湖サミット(主要国首脳会議,G8)が終わって1週間が過ぎました。開催前、開催中、新聞、テレビがこぞって取り上げた地球温暖化問題もサミットが終わった今、早くも忘れ去られてしまったかのように報道されなくなりました。洞爺湖サミットの成果はあったのでしょうか。この点について、石原慎太郎東京都知事は「大山鳴動して一匹のねずみもでなかった。会議を持った意味があったのか」と酷評しています。環境NGOの気候ネットワークも代表の浅岡美恵さんの名前で、「昨年のサミットから進展なし、福田首相、気候変動問題でのリーダーシップ発揮に失敗」という見出しのプレスリリースを発表しました。

 

☆温暖化対策では言葉の遊び程度でお茶を濁す


期待はずれと言ってしまえばそれまでですが、最大の関心事であった温暖化対策については、ほとんど見るべき成果が無かったというのが率直な印象です。昨年のドイツ・ハイリゲンダム・サミットでは、世界の温室効果ガスの排出量を2050年までに半減させることを「真剣に検討する」だったのが、今回はそれを「各国の共通の目標にする」になっています。これでは、昨年のサミットと比べ、前進したのかしないのかよく分かりません。しかも、注目されていた2020年の中期目標の数値化は見送られてしまいました。結局、急を要する温暖化対策は各国間の利害調整のため「言葉の遊び」で時間を空費しお茶を濁して終わったというのが実状のようです。

 

 

☆可もなく不可もなかった福田首相のリーダーシップ


それでは、ホスト役を務めた福田康夫首相のリーダーシップはどうだったのでしょうか。私の採点では、「可もなく不可もなし」というところです。「ちょっと甘すぎるのではないか」と思われるかもしれませんね。しかし私は、最初から、首相のリーダーシップに大きな期待を持っていませんでした。期待が低ければ、会議が無事に終わっただけでも成功だったということになります。

 

 

☆緊急度の高い問題を解決できないサミットに限界


実際、サミットの評価は難しいと思います。期待を大きく持ち過ぎれば裏切られるし、期待のハードルが低くければ、各国首脳が一同に会し、顔を合わせて、温暖化や石油価格、食糧問題などを話し合っただけでも大成功ということになるわけです。サミットのお膳立てをした各国の外務官僚などの事務局の大半はこの立場です。主要国の利害が複雑に絡み合う重要案件の解決はサミットの場では難しいことを彼らはよく承知しているからです。それ故に最初から各国シェルパー(サミットの準備をする外務官僚)は、自分たちが用意したシナリオ通りに会議が進み、爆弾テロ事件などが起こらなければそれで大成功という評価になるわけです。福田首相の立ち居振る舞いも、シェルパーたちのシナリオに沿う範囲だったように思います。だが、サミットが、この程度の顔見世興行で成功という評価になると、温暖化問題のように地球の命運を揺さぶりかねない緊急度の高い重要問題を扱う場としてはふさわしくないことになり、自らの限界を露呈したともいえるでしょう。

 

 

☆南北が参加する問題解決のための新しい国際会議が必要


第1回サミット(主要国首脳会議の前身)は、第1次石油ショック後の混乱を収拾するため、75年にフランスのジスカールデスタン大統領(当時)の呼びかけで開かれました(ランブイエ・サミット)。30年以上も前のことです。当時、日米欧の先進主要国の経済力は圧倒的に大きかったわけです。主要な問題はサミットで合意すれば、解決への道につながりました。しかし今は当時と違います。中国、インド、ブラジルなどの新興国の経済発展は目覚しい。CO2排出量も、2010年には途上国が先進国を上回る見通しです。温暖化ガスの削減といったグローバルな問題は、もはや先進国中心のサミットでは解決できません。今回のサミットでは、主要排出国会議が同じ会場で開かれ、前述の国の他に、メキシコ、南アフリカなど新興国8カ国が参加しました。G8参加国とこれらの新興8カ国を合わせると、世界のCO2排出量の8割をカバーします。今回の洞爺湖サミットで評価できるものがあるとすれば、サミットに代わるグローバルな問題を解決するための新しい国際会議のモデルを提供したことでしょう。

 

2008年7月記

 
 
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