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クロマグロの完全養殖、成功するといいですね

初セリで1億5千万円とは、驚いた

 新年早々、大きな話題を呼んだのが、東京・築地市場で開かれた初セリで、222キロのクロマグロが史上最高値となる1億5540万円で競り落とされたこと。最高値の更新は3年連続で、11年が3249万円、昨年12年が5649万円、それが今年は一気に3倍近くも跳ね上がってしまいました。

需要拡大に供給が追いつかない

 価格が高騰した背景には、近年日本以外に中国や香港など外国でマグロ需要が大きく伸びていることが影響しています。今回も日本の寿司屋さんが競り落としましたが、香港の業者との競り合いで値段が暴騰し、高くても7〜8000万円と踏んでいたのが、その倍近くまで跳ね上がってしまったとのことです。

一貫当たり4〜5万円の値段になるとか・・・

 1キロ当たり70万円になりますが、通常の価格は2万5千円〜4万円程度なので、20倍近くも高い。新年の初セリ、ご祝儀相場とはいえ異常というほかありません。競り落とした値段から推定すると、一貫当たり4〜5万円になるそうですが、競り落とした寿司屋さんは通常価格(大トロ一貫当たり398円)でお客さんに提供したそうです。

絶滅危惧種として保護が検討されたこともありますが・・・

 トロ部分が多く、日本人が大好きなクロマグロは、世界生産の約8割を日本人が消費していますが、近年過剰漁獲で、その数が急激に減少しています。このため、絶滅が心配される生物種の国際取引を禁止するワシントン条約会議が10年に開かれた際、大西洋・地中海産のクロマグロの禁輸が検討されたことがあります。日本などの反対で禁輸は避けられましたが、その代わり10年以降、厳しい漁獲枠が定められました。同海域のクロマグロは、70年代後半から減少傾向が目立ちはじめ、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)は、今世紀に入った頃から、漁獲枠を規制してきました。

昨年10月にクロマグロが増えてきたことが確認される

 10〜12年の3年間の漁獲枠は特に厳しく規制され、各年約1万3000トン程度に抑えられました。06年当時の年間3万2000トンと比べ、3分の1程度にまで抑えられました。この厳しい漁獲管理を徹底した結果、ICCATは昨年10月、クロマグロが増えていることを確認しました。そのため、今年のクロマグロの漁獲枠を10年ぶりに増やすことを決めました。最も今年の増枠は500トンの微増にとどまるため、供給量はほとんど変わりませんが、減少に歯止めがかかった点で朗報と言えるでしょう。

国内供給の4分の1に当たる9000トンが養殖マグロ

 しかし、世界的に見ると、クロマグロはいぜん危機的状況にあります。日本国内ではクロマグロ不足に対し、06年頃からクロマグロの養殖が活発になっています。現在、137の養殖場があります。水産庁の調べによると、11年は前年よりも4割多い約9000トンの養殖マグロが供給され、国内供給の約4分の1を占めました。これに危機感をもった水産庁は昨年6月、クロマグロの資源管理を強化するため、養殖の規模を現状の範囲にとどめ、あらたに拡大しないように規制しました。実は、養殖といっても、クロマグロの養殖は、沿岸で天然稚魚を捕獲して養殖施設で成魚に育てる方式です。天然稚魚を大量に捕獲するので、海のマグロは逆に減少してしまいます。

水産庁、陸上で完全養殖へ挑戦

 そこで、切り札として登場してきたのが、完全養殖です。たとえば、水産庁が長崎県でクロマグロの産卵、稚魚の養殖施設を陸上に建設し、今春から稼働させようとしている完全養殖への挑戦がその一つです。クロマグロの完全養殖は、近畿大学が海上のいけすで成功しており、水産庁の実験は、それらの成果を取り入れ、陸上養殖に踏み出すところに特徴があります。同庁が進めている完全養殖の方法は、第一段階として、長崎市の港湾に面した場所に直径20b、深さ6b、3000dの海水を蓄えられる水槽2基を建設します。回遊魚のマグロのため、水槽を円形にして、水流が循環するように工夫しています。この二つの水槽に生後2年のクロマグロを100匹ずつ移します。

5年後に10万匹の養殖用稚魚の供給目指す

 クロマグロは3年で産卵する成魚になるので、1年後には産卵が期待できます。 水産庁では、5年後に約10万匹の養殖用の稚魚の供給を目指しています。この数は、養殖用に捕獲する天然稚魚(年約50万匹)の5分の1に相当するそうですから、成功すればクロマグロの安定供給に大きな貢献が期待できます。

成功すると、いいですね

 養殖成功のためには、水温や日照、配合飼料など飼育環境を制御し、特定の時期に一定量を採卵できるようにすることです。これから実験の主要なポイントだそうです。ふ化した稚魚は、一定期間別の陸上の水槽で育て、6ab前後まで育ったら、専用のトラックで海上のいけすまで運び、成魚になるまで養殖する、という計画です。 日本発のクロマグロの養殖技術、成功するといいですね。

2013年1月10日記

 
 
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