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都市鉱山・宝の山に挑む

使用済み小型家電は、埋め立て処理されてきた

 携帯電話やデジカメなど小型家電には、様々な貴重な金属資源やレアメタル(希少資源)が使われています。たとえば、携帯電話には、金、銀、銅、鉛、マグネシューム、リチウム、インジウムなど実に19種類の金属が使われています。意外に思われるかもしれませんが、使用済み小型家電類の多くは、これまでリサイクルされず廃棄物として埋め立て処分されてきました。

4月から小型家電リサイクル法がスタート

  しかし、新興国の需要拡大に伴う資源価格の高騰や資源供給の偏在などから資源の安定確保が難しくなっています。一方国内では適正に環境管理された最終処分場が不足し、新たな土地の確保が困難になっています。この資源制約と環境制約を同時に解決するための切り札として、登場してきたのが、4月1日から施行された小型家電リサイクル法(正式名は使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律)です。法律の目的は使用済小型電子機器を捨ててしまわず、それに含まれている様々な金属資源を素材ごとに分別して取り出し、再資源化して有効活用することです。

携帯電話1万個で、300〜400グラムの金が回収できる

 これまで、ゴミとして捨ててきた小型家電には利用できる金属資源がたくさん含まれており、「都市鉱山」と呼ばれてきました。専門家の推計によると、携帯電話を1万個(約1トン)集めると、300〜400グラムの金が回収できます。ノート型パソコンを350台(約1トン)集めると、92グラムの金と360キログラムの銅が回収できます。金を大規模に採掘している自然の鉱山の鉱脈中の品位は1トン当たり0・3〜1・0グラムなので、都市鉱山が宝の山であることが分かります。

年間65万トンの小型家電が排出、844億円相当の金属が採れる

 小型家電リサイクル法は、この宝の山から貴重な金属資源を取り出すためのガイドラインです。昨年8月3日に法律が成立し、今年4月から施行されました。主務官庁の環境省によると、1年間に使用済みになる小型家電製品は約65万トン。その中に有用資源は約28万トン含まれており、金額に直すと844億円になると推計しています。その金額の約9割を金が占めており、都市鉱山が宝の山と言われる所以です。

回収は市町村が責任を持つ

 小型家電リサイクル法の対象は、携帯電話、デジカメ、パソコン、電子レンジなど28分類、100品目以上が対象になっています。使用済み小型家電類の回収は、市長村が責任を持ちます。これまで、小型家電類の回収は、自治体が集めた粗大ごみや一般廃棄物の中から選び出す手間のかかるピックアップ回収が中心でした。

様々な回収方法が考えられている

 だが、小型家電リサイクル法が施行されたことにより、これからは回収ボックス(回収箱)を様々な拠点に常設し、排出者が使用済み小型家電類を直接持ち込み、投入する方式が広く普及してきます。回収ボックスの設置場所としては、市役所などの公共施設、スーパー、家電量販店、ホームセンター、郵便局、学校、駅、駐輪場など様々な場所が考えられます。小型家電の回収は、小型家電リサイクル法が実施される以前からすでに一部の自治体や市民団体によって実施されています。それらの経験を生かして、ごみ分別収集のステーション(ごみ排出場所)に小型家電用の回収コンテナ等を設置する方法、資源物の集団回収を実施している市民団体が回収する方法、清掃工場に消費者が持参する方法など様々なやり方で回収できます。

製錬メーカーが金属に再生し、再生資源として活用

 回収した小型家電は国から認定を受けた専用の処理施設を持つ事業者に売却ないし無償で引き渡します。事業者は中間処理施設で分解し、それを製錬メーカーに持ち込みます。製錬メーカーはそれを金属に再生し、再生資源として活用(循環利用)するという流れになります。

予算不足で、自治体の7割弱が参加をためらう

 もっとも、小型家電リサイクル法がうまく機能し、貴重な金属資源のリサイクルが軌道に乗るまでにはいくつかの問題があります。最大の問題は、この制度に参加するかどうかは自治体の判断に委ねられていることです。環境省が昨年11月に調査したところ、参加の意向を示した自治体は全体の33・8%にとどまっていました。残りの7割弱の自治体が参加をためらっているのは、お金の問題があるからです。新制度を導入するためには、回収を担当する人員の確保とそれに伴う人件費、さらに回収箱やポスターなどの製作費、輸送費などの追加的な経費が必要になります。財政事情が厳しい多くの市町村にとって、新制度に参加したくても、初期費用の壁が大きく立ち塞がっています。

環境省、初期段階の資金支援を検討

 このため、28品目全部を扱うのではなく、リサイクルしやすい品目に絞って回収する自治体もあります。また、パソコンの場合は、資源有効利用促進法によって、パソコンメーカーが直接回収するルートが定着しているため、回収の対象から外す自治体もあります。主務官庁の環境省では、初期段階の準備費用を支援することで、小型家電のリサイクルに取り組む自治体の数を増やすことが必要だと考えており、そのための予算措置などの検討を始めています。

2013年4月5日記

 
 
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